その言葉はティータイム中に王太子からレミリアに伝えられ、帰宅したレミリアが『内緒よ?』と言って嬉しそうにエマに教えてくれた。

出生の秘密を握られていても、もう恐れない……そのような王太子の覚悟が伝わってきて、エマもレミリアと一緒に喜んだのであった。

時刻は十時になる。

ノックの音がしてドアが開けられ、「挙式のお時間でございます」と王城の女官が迎えに来た。

「いってらっしゃいませ、レミリア様。私は参列者席から見守っています」

エマはレミリアをぎゅっと抱きしめてから、笑顔で送り出した。

挙式が済めばレミリアは王太子妃として王城に住む。

エマも侍女としてついていくことになっており、離れる予定はないのだが、なんとなく寂しくもある。

手塩にかけて育てた娘を嫁に出す時の母親のような心境だ。

(こんなに立派な淑女になって……。今後は私の手助けなんかいらないのかもしれないけど、たまには甘えて頼ってくださいね……)


伝統的かつ荘厳な挙式はつつがなく執り行われ、間もなく終わろうとしている。

王太子に腕を絡めたレミリアが、聖堂のドアに向けて赤絨毯の上を進んでいた。