「きっとエマです。エマがあちこち走り回って頼んでくれたんです。ああ、エマ。いつも助けてもらってばかりで、恩返しできないままお別れなんて……」

エマは嗚咽を漏らすまいと、口を押えていた。

(恩返しはしていただきます。レミリア様にウエディングドレスを着せることが私の幸せ。まだハッピーエンドを諦めていませんから……)

王太子が一歩前に出て、鉄格子を握った。

「君たちは深い信頼関係で結ばれているんだな。俺は尽くしてくれる近侍でさえも、信じ切れずに――」

話の途中で急にレミリアがふらついた。

「あっ」と声を上げ、床に崩れ落ちる。

この一週間、絶望の中で食事も喉を通らず、夜も眠れなかったことだろう。

立って話をする体力は、ほとんどなかったのだ。

思わずエマは小部屋を飛び出そうとし、ドアを開ける寸前で隠れていなければならないことを思い出した。

(レミリア様の頑張りを台無しにするところだった……)

心配しながら覗き穴まで戻ると、王太子が鉄格子のドアの鍵を開けたところであった。

床に膝をついて、レミリアを腕に抱く。