冷たい声でそう言ったレミリアは、ゆっくり立ち上がると鉄格子の前に来る。

王太子は複雑な表情をしている。

やっと口を利いてくれたとホッとしているような、いつもより生意気な物言いをするレミリアに戸惑っているような、恐れているような感情が読み取れた。

それを見てエマは確信する。

(これまで上げた親密度は無駄じゃなかった。王太子殿下はレミリア様に少しは恋愛感情を持っているようね。保身のために処刑を決めておきながら、レミリア様に嫌われることを恐れているみたい。そこを突く私の作戦はきっと間違っていない。レミリア様、頑張って……)

レミリアは睨むように王太子を見て、「苺が食べたいわ」と希望を伝えた。

「秋に苺はありません。別のものにしてください」

事務的な口調で答えたのはオズワルドだ。

それを王太子が諫めた。

「探しもせずに断るな。まずは庭師に温室で栽培していないか確認しろ。なければ近郊の農家に使いを出し、苺がないか聞くんだ。品種改良のための温室を持っている農家もあるだろう」

オズワルドはそこまでしなくてもと言いたげだが、「かしこまりました」と一礼し、出ていった。