自殺防止の監視部屋か、あるいは特別房の高貴な罪人がなにかを要求した場合に即時に対応するため、使用人を待機させておく部屋なのかもしれない。

レミリアには必要ないと判断したのか、中は無人であった。

エマが隠れて間もなく、ドアが開けられた音がして、ふたり分の靴音が近づいてくる。

「竜騎士団長殿、ここにいらしたのですか」

その声は近侍のオズワルドのものである。

「はい。レミリア嬢は食欲がないようだという報告を受けましたので、体調確認に来ました」

ダグラスが言ったことはごまかしだが、嘘でもないようだ。

もうすぐ正午だというのに、テーブルの上には手つかずの朝食がのったままである。

エマは覗き穴からそっと、特別房の様子を窺う。

「レミリア、また食事を取らなかったのか。どんなものなら食べる気になる? 菓子や果物、なにを差し入れても口にしない。倒れてしまうぞ」

レミリアはベッドの端に腰かけている。

王太子の気遣いをいつもなら無視したのであろうが、今日はエマに指示されたので口を開いた。

「三日後に殺す人間の体調を心配するなんて、滑稽ね」