「レミリア様なら大丈夫です。失敗しても恐れる必要はありません。王太子殿下が処刑を取りやめてくれないなら、私が身代わりになります」

それはどうにもならなかった場合の最後の作戦だ。

処刑の際、罪人は目隠しをされて斬首される。

レミリアに似せたかつらを被り、目隠しではなく顔全体を隠せるマスクをつけたいと望めば、騙せるのではないだろうか。

その際にはダグラスを言いくるめて、協力を仰ごうと考えていた。

怖くないと言えば嘘になるけれど、ハッピーエンドに導けなかった自責の念でボロボロになって生きるより、身代わりになった方が心は楽である。

「エマにそんなことはさせられないわ!」

レミリアが声を大きくしたら……ドアが開く音がして、ダグラスが駆け寄った。

「エマさん、隠れてください。王太子殿下がお越しになられました」

焦り顔のダグラスが、エマを特別房の横にあるドアの中に押し込んだ。

そこは事務机と簡素なベッドのある装飾性のない狭い小部屋。

石壁に小さな穴が開いていて、そこから特別房の中を覗くことができた。