調度類は女性が好みそうなデザインで、レミリアが好きな本や花で少しでも穏やかに過ごせるようにと気配りがされていた。

もし王太子がレミリアを心の底から信じることができたなら、結末を変えられる……エマはそう信じて動いている。

(絶対にあきらめない)

その信念を胸にエマはレミリアに問いかける。

「王太子殿下がこちらにいらっしゃることはありますか?」

「え、ええ。一日一回、必ず来るわ。なにか欲しいものはないか、食べたいものはないかと聞かれるけど、お話したくないから私は黙っているの。今日はこれから来ると思うわ」

「そうですか。では今日は王太子殿下とじっくり話していただきます」

エマはレミリアにひそひそと策を授ける。

(王太子殿下の心に踏み込み、処刑を撤回させるには……)

「そんな言い方、私にできるかしら……」

引きこもりで交流下手なレミリアにはハードルが高いと思われるが、やってもらわなくてはエンディングを変えられない。

不安げなレミリアの手を、エマが強く握った。