転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)


「どうしてそれを……?」

レミリアは涙も止まるほどに驚いていた。

エマはダグラスにも言ったことを、もう一度口にする。

「私はなんでも知っています。王太子殿下が今、どんなお気持ちでいるのかも」

エマが前世でやり込んだ乙女ゲームは二十作品ほど。

乙女ゲームオタクとして断言できるのは、メイン攻略キャラに真の悪人はいないということだ。

不良高校生や海賊、マフィアといったよくない肩書のキャラたちも、みんな魅力的で情け深いところがあり、決して幸福ではない自身の運命と闘いながら、まっすぐ生きていた。

ブルロズのメイン攻略キャラであるクリストファーも、悪人ではないはずだ。

それならばなぜレミリアにひどい仕打ちをするのかといえば、怖がっているからだろう。

彼は自身が築き上げてきたものが全て崩れ落ちる気がして、怯えているのだ。

レミリアのステータスは攻略可能な数値に達しており、親密度は目標値に若干届かない程度であると思われる。

王太子はレミリアを気に入っている。

それはこの豪華に整えられた特別房を見てもわかる。