転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)

「エマさん、大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ。お休みになられてください」

差し出された手を取らず、エマはソファに掴まりながら立ち上がった。

「休んでなんかいられない。レミリア様はどんな思いでいることか……。私が絶対に助け出す。ここは私にとって現実世界よ。ゲーム通りのバッドエンドにはさせない!」

静止を振り切り、エマは玄関に向かう。

もうひとり、協力を仰ぎたい人物がいた。

竜騎士団長のダグラスだ。

地下牢にいるというレミリアに会わせてくれるよう、彼にお願いするつもりでいた。

(レミリア様、今行きますからね……)

エマはふらつく足に力を込め、王城に向かうべく、モリンズ伯爵邸を後にした。


門番に止められずに裏門から王城内に入ることができたのは、普通すぎて存在感が薄いモブだからであろう。

大邸宅の裏側にある騎士団詰所は石造りの要塞のような建物で、そこに真っすぐ向かっていた。

さすがに詰所の中にはすんなりと入れない。

扉の前で若い騎士に、「なんの用だ」と止められた。

「ダグラス・マディソン様にお話があって参りました」