転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)

どうやら腕に提げているバッグをドアにぶつけてしまったようで、それが物音の原因のようだ。

ということは、もっとよく話を盗み聞こうと、ドアに近づいたということだろう。

困惑と怯えを混ぜたような顔で、レミリアは片足を引いた。

その細腕をクリストファーが捕らえた。

「知らせがなかったが、すでに着いていたのか」

「あ、あの、使いの方は殿下をお呼びしに行ってきますと……わたくしは、ここで待つように言われて……」

王城は広く階段もあちこちにある。どうやら行き違いになってしまったようだ。

加えて使いの者が間違えて、続き間の方にレミリアを案内したらしい。

レミリアに落ち度はないが、話を聞かれてしまっては、のんきにお茶を飲んではいられない。

(可哀想だが……)

クリストファーは瞳を険しくして詰問する。

「どこから話を聞いていた? 正直に答えろ」

「あ……」

レミリアは震えていた。

たどたどしく、クリストファーたちが入室してからの会話を全て聞いてしまったと打ち明ける。

「大変申し訳ございません……」

消え入りそうな声で謝罪したレミリアは、懇願するような目を向けた。