転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)

部屋の中にいるのは、近侍とふたりだけだ。

オズワルドは声を潜めず、クリストファーに注意する。

「花に罪はございません。どうか過剰にご反応なさいませんように。不審に思われます」

「そうだな。だが、全ての始まりは青バラだ。俺がマリアの子として生を受けたのも、本物の王太子とすり替えられたのも、青バラのせいに思えてならない。ローズ家の血筋だという忌々しい秘密に苦しまねばならないのもな」

怒りをこらえようと奥歯を噛むクリストファーに対し、オズワルドはどこまでも冷静だ。

「流れる血がなんであろうと、王太子はあなた様です。憎むなら花ではなく、ローズ家を。殿下を脅すあやつらは始末せねばなりません」

「罪状はどうする?」

「国家転覆策略罪がよろしいかと。一族のひとりたりとも生き残らせてはなりません。王都に連れてきて出生の秘密を喚かれては困りますので、ザセブにて処刑しましょう」

その時、続き間からカタンと小さな音がした。

ふたりはハッとして振り返る。

クリストファーが隣に繋がる白いドアを手荒に開けると……そこにはレミリアが立っていた。