転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです（汗）

オズワルドは貴族ではなく、田舎町で宿屋を営む両親のもとに生まれた。

両親を助けて宿屋で働いていたところ、ある日突然、王太子の視察の一行が宿泊することになった。

悪天候で先に進めず、予定にはなかった宿泊だ。

それなのに視察団を指揮する侍従がそれ相応のもてなしを要求してきて、オズワルドの両親は困ってしまった。

それを解決したのはオズワルド。

方々に使いを出してすぐさま不足している品々を揃え、町一番の料理人もつれてきた。

その手際の良さに感心したクリストファーが、オズワルドを侍従に取り立てたのだ。

立身出世など考えたこともなかった田舎町の青年にとって、夢のような話であった。

オズワルドはクリストファーに恩を感じている。

それをわかっていながら意地の悪い質問をしたのは、たったひとりだけでも心から信じられる味方が欲しかったからである。

裏返せばクリストファーは今、誰もかれもが自分の命と地位を脅かす敵に思えて、恐怖の中にいるということだ。

「冗談だ。オズワルドは信じられる。今後も俺を支えてくれ」

報告書を鍵付きの引き出しにしまい、クリストファーは立ち上がった。