『いいですか、レミリア様。本当はあなたが心配だけど今はなにも聞かないであげる。あなたから打ち明けてくれる日を待っています。もっとあなたの心に寄り添いたいの……という感情を目に表して切なげに微笑み、無言で頷くんです』

『急に難しくなったわ……』

エマに教えられたことを思い出し、レミリアは王太子を心配しながら、じっと見つめて頷いた。

すると青バラのような瞳が三日月に細められた。

「今の俺には、君の無口さが心地いい。実は妃を早めに決めなければならなくなった。レミリア、君となら……」

名前を呼び捨てられ、思わせぶりな言葉をかけられたレミリアは、心臓を大きく弾ませた。

次の瞬間に、腰を引き寄せられ、唇を奪われた。

驚きと乙女のときめき、恥じらいが一気に押し寄せ、レミリアは息もできずに固まっている。

こっそりついてきていたエマが階段から目だけ覗かせ、静かに悶えているのには、少しも気づくことができなかった。

* * *

秋が近づき、涼しい風が洗濯物を揺らす。

裏庭にいるエマは乾いたシーツを取り込みながら、ニヤニヤしていた。

「エマさん……?」