自宅を出て一時間ほど。
やっと灯台に着いた。
海に向かって突き出た岬は眺望抜群だが、灯台の他になにもない。
灯台守のものだろうか、やけに毛艶のよい馬が一頭、近くの木の幹に繋がれているだけだ。
馬車を降りたレミリアは、風で飛ばされそうな水色の帽子を押さえ、淡白に言う。
「景色を見たわ。潮風も感じて遠くに来た気分になれた。さあ帰りましょう」
「なにを仰るのですか。レミリア様は灯台に上らないといけません。私は高所恐怖症ですので遠慮します」
高所恐怖症というのは嘘だろう。
怪盗ローズに連れ去られて帰ってきた時に、『慣れてしまえば空の散歩を楽しめました』と話していたのだから。
(どうして私だけ上らせるのよ……)
理不尽さを感じても、なぜか拒否できない。
石造りの灯台の粗末な木戸を開けて、レミリアだけが中に入った。
そこは円形の空間で、薪が大量に積まれ、斧などの作業道具が壁にかけられていた。
上から光が差し込んでも薄暗く、灯台守は不在のようだ。
(勝手に上がったら、後で叱られないかしら……)
心配しつつも足が勝手に階段に向く。
やっと灯台に着いた。
海に向かって突き出た岬は眺望抜群だが、灯台の他になにもない。
灯台守のものだろうか、やけに毛艶のよい馬が一頭、近くの木の幹に繋がれているだけだ。
馬車を降りたレミリアは、風で飛ばされそうな水色の帽子を押さえ、淡白に言う。
「景色を見たわ。潮風も感じて遠くに来た気分になれた。さあ帰りましょう」
「なにを仰るのですか。レミリア様は灯台に上らないといけません。私は高所恐怖症ですので遠慮します」
高所恐怖症というのは嘘だろう。
怪盗ローズに連れ去られて帰ってきた時に、『慣れてしまえば空の散歩を楽しめました』と話していたのだから。
(どうして私だけ上らせるのよ……)
理不尽さを感じても、なぜか拒否できない。
石造りの灯台の粗末な木戸を開けて、レミリアだけが中に入った。
そこは円形の空間で、薪が大量に積まれ、斧などの作業道具が壁にかけられていた。
上から光が差し込んでも薄暗く、灯台守は不在のようだ。
(勝手に上がったら、後で叱られないかしら……)
心配しつつも足が勝手に階段に向く。


