転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)

ドアを開けて廊下に向けて声を荒げる。

「騎士を呼べ! 不届き者が現れた!」

すぐにふたりの騎士が駆けつけて、マリアは捕縛された。

「殿下、お気を確かに。あのような世迷言を信じてはなりません!」

オズワルドに強く肩を掴まれ、クリストファーはハッと顔を上げた。

(そうだ。全てでたらめに決まっている……)

「殿下が今なさらなければならないのは、次期国王として国民からの信頼を確固たるものにすることです。まずは早々に妃を選びましょう。お子を成すのも務めです。ローズ家に関しては私にお任せを。殿下は余計なことにお心を砕いてはなりません」

「あ、ああ……」

しかし――。

「あなたの中のローズの血を信じているわ」

連行されるマリアが残した言葉が、呪いのようにクリストファーの心臓を締め上げる。

苦痛に顔をしかめて胸を押さえた彼は、死神に鎌を突きつけられているかのような恐怖を覚えるのであった。

* * *

「エマ、まだ着かないの? 馬車がガタガタ揺れてお尻が痛くなってきたわ」

夏がもうすぐ終わろうという頃、レミリアはエマに連れられ王都の南西に向かっていた。