転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです（汗）

マリアを睨みつけ、叱責しようと口を開きかけたが、クリストファーに手のひらを向けられ、発言の許可を与えられなかった。

クリストファーはフンと鼻を鳴らした。

質問を重ねれば辻褄が合わなくなり嘘を暴けるだろうと、冷静に問いかける。

「なぜそのような真似をした？」

大方、自分の子に贅沢をさせてやりたかったとでも言うのだろうと、彼は予想していた。

そして、バレたら親子ともに死罪になるような真似をするには浅い動機だと、返してやるつもりでいた。

けれども予想外の返事を聞かされる。

「私はローズ家の娘です」

「なに……？」

マリアがローズ家について、重たい口調で語る。

ローズ家はかつて花の生産が盛んな美しい領地を持つ伯爵家であった。

特にバラの栽培には力を入れており、技術の高い職人を大勢抱えていた。

事件が起きたのは二十八年前のこと。

不可能だと言われていた青バラの開発に成功した矢先に、根こそぎ盗まれたのだ。

直接盗んだ犯人は不明だが、それは権威ある植物学者の手に渡った。

その学者は自分が開発したと言って品種登録し、国王に献上した。