転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)

子供の父親はエンベリー卿の屋敷の使用人だが、結婚を申し込まれても拒否した。

必要なのは夫ではなく、男児であったからだ。

出産後、数日して、マリアは協力者とともに王城に入った。

王妃が産気づき、出産の世話をしながらマリアは願っていた。

(どうか王妃の子も男児でありますように……)

女児では意味がない。

一族上げての今までの計画と努力が水の泡になってしまうからだ。

祈りが通じたかのように、王妃が産んだのは男児であった。

あの時、涙を流して王太子の誕生を喜んだ心に嘘偽りはない。

これがマリアの一族の灯だと信じていた。

そうしてマリアは乳母として赤子の世話をする中で、こっそり連れてきていた我が子と王太子をすり替えたのだ――。

そこまで聞いたクリストファーは、大いに衝撃を受けていた。

けれどもまだ取り乱すほどではない。

(到底、信じられる話ではない。マリアは一体どうしてしまったんだ。金に困って嘘を思いつき、揺すりにきたのか……?)

懐かしさや慕わしさは限りなく薄らいで、蔑みの目でマリアを見据える。

オズワルドも少しも信じていないようだ。