振り向けばダグラスが沈痛な面持ちで立っており、頭を下げられた。

「竜騎士団長としてお詫び申し上げます。あなたを守れなかった己の不甲斐なさを痛感しております。この度の失態の責任を取り、降格を願い出る所存で――」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

エマは慌ててダグラスの手を取り、顔を上げさせた。

自分ごときモブ侍女のことで、そこまで反省されても困るだけ。

降格処分なんてことになれば、エマの方が罪悪感で押し潰されてしまいそうだ。

「ダグラスさん、私は無事でした。それでいいじゃないですか。あなたは強い志を持って竜騎士団長をお勤めなのでしょう? 私のせいでその道を外れてほしくありません。これからも国のために空を飛んでください」

思い留まらせようと慌てて言った言葉は、彼の胸にしみてくれたようだ。

ただし、エマの望みとは少々違った方向に。

ダグラスの精悍な顔にうっすらと赤みがさす。

武骨な手でエマの右手をそっと取ると、自分の心臓の位置に置いた。

二割増しで高鳴るエマの鼓動と、同じくらい速い彼の脈が伝わってくる気がした。