転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)

「父の形見であっても所有権は俺にない。謎を解いたら返すつもりなんだ。だから、怪盗ローズの正体をバラさないでね」

普段はどこか茶目っ気がある琥珀色の瞳が、今は男の色香をたたえていた。

数センチの距離に迫る唇は蠱惑的に弧を描き、エマの鼓動が振り切れんばかりに高鳴る。

(も、もしかして、これが私のファーストキス? 前世でも現世でもしたことがないのよ。目を閉じた方がいいのかな……)

乙女心が刺激され、うっかりその気になりかけたが、ハッとして自分を戒める。

(ヒロインは私じゃないでしょ!)

慌ててジェラルドの胸を両手で突っぱねた。

「あ、あの、誰にも言いませんのでご安心を。よかったらその謎解きもお手伝いします」

「それは助かるよ」

ジェラルドから甘い雰囲気がスッと消え、人懐っこい笑みを浮かべている。

正体をバラさないと約束させたら、迫る必要はないということか。

エマはホッと息をついて、壁に飾られている十八枚の絵画に視線を向けた。

ジェラルドは両手を頭の後ろで組む。