転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)

エマはその前にひざまずくと、ハンカチを彼に差し出す。

「汗を拭いてください。夏といっても体が冷えてしまいます。お水をもらってきましょうか? それとも医務室に行きます?」

「君は?」

「レミリア様の侍女のエマと申します。先ほどはうちのお嬢様が失礼いたしました。レミリア様はええと、その……冷たいことを言ってしまいましたが、心配していた反動なので許してください。ピアノ演奏は深く感動していらっしゃったのですよ。本当に素晴らしい演奏でした」

サミュエルはエマのハンカチを受け取り、額の汗を拭いた。

青白かった頬にいくらか血の気が戻ってきて、美しい微笑を見せてくれる。

「エマさん、ありがとう。次に会った時にこのハンカチを返そう。その時には『エマ』という題の曲を君に贈るよ。聴いてくれる?」

「は、はい……」

(再登場を示唆するその台詞、私が聞いてはいけないものだったんじゃ……)

エマはバルニエ伯爵を思い出していた。

あの時もレミリアのフォローをしようとしたら、なぜか自分が好感を持たれてしまった。

(もう余計なことはしない方がいいのかな……)