転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)

サミュエルがピアノから離れ、続いてバイオリニストが前に出て独奏を始める。

サミュエルはゆっくりとした足取りで壁沿いを進み、前庭に面したバルコニーの扉を開けた。

外の空気が吸いたいのだろう。

心配そうに目で追うレミリアが、またエマに耳打ちする。

「倒れてしまうといけないから、様子を見てくるわ」

(なんてお優しい……と言いたいところだけど、ゲームの進行に沿っての行動なのかも)

エマはレミリアの後をついていく。

なにもアドバイスできないのが悔しく、バルコニーに出ていったレミリアを扉の陰からこっそり見守るしかできない。

サミュエルは手すりに背を預けて床に座り込んでいた。

「ご気分が悪いのですか……?」

恐る恐る近づいて声をかけたレミリアに、彼は顔を上げた。

それから無言で右手を差し出す。

引っ張り起してほしいということかと、レミリアは思ったのだろう。

その手を両手で握ろうとして、「キャッ!」と声を上げた。

手首を掴まれたと思ったら逆に引っ張られ、レミリアは今、彼の胸の中だ。

サミュエルがクスクスと笑う。