転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)

「おおっ! ミッチェランジェロの聖女の祈りではありませんか! 大興奮必死ですぞ。公爵様、お早くこちらへ。至高の彫刻について解説させてください。実は隠された制作秘話があるのです。それを知っていれば鼻高々でございます」

「そうか、そうか。自慢になるというのなら、ぜひ聞かせてもらおう」

ホール内には壁際やドア横に、警備の騎士が等間隔に立っている。

王太子がひと声かければセニョルは不審者として捕らえられるが、そうならなかった。

ウォベック公爵が離れるのを待っていたかのように、王太子に挨拶しようとまた人が集まりだす。

王太子は忙しそうで、間もなく開始時間ということもあり、セニョルを疑っている暇はないようだ。

そして十九時半になり、芸術サロンの開始が告げられた。

主催者の王太子が挨拶し、その後に有名なピアニストとバイオリニストが紹介された。

ホールの奥にはグランドピアノが置かれ、三十席ほどの客席が用意されている。

有力貴族や高齢者が座り、他は立って演奏を聴く。

流麗な調べを奏でるのは、サミュエル・ソワイエという二十六歳の天才ピアニスト。