転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)

「ディディエ・セニョルと申します。美術品の売買の仲介と鑑定を生業としております。王太子殿下にお目にかかれましたこと恐悦至極に存じます。それにいたしましても興奮するほどの名品揃いで、殿下は美術品に造詣が深いとお見受けいたします。私が目をかけております新進気鋭の画家の作品を、ぜひともご紹介いたしたく――」

立て板に水の如く、セニョルの口は止まらない。

しかも、いきなり商売を始めるとは、無礼を通り越して王太子は呆れているようだ。

王太子が手を上げて制すと、セニョルはやっと黙り、ウォベック公爵が笑って言う。

「この者にはそこで声をかけられてな。今日はわしの専属説明係を務めたいというので、連れて歩くぞ」

それに対し、王太子が首を傾げた。

「そこで声をかけられたとは……?」

エマとレミリアは、彼らから四メートルほど離れた壁際にいる。

エマがハラハラしているのは、このままセニョルが怪しまれて追い出されては、ジェラルドイベントが消えてしまうと危ぶんでのことだ。

けれどもセニョル……怪盗ローズは少しも焦ることなく、両腕を広げて近くの大理石の立像に駆け寄った。