転生侍女はモブらしく暮らしたい〜なのにお嬢様のハッピーエンドは私に託されているようです(汗)

王太子の前にいた他の貴族がサッと場所を譲り、王太子は人当たりのよい笑みを浮かべてウォベック公爵に握手を求める。

「お待ちしていました。おや、顔が赤いですね。お酒を召して来られたのですか?」

「知り合いから上質なワインが送られてきたのだよ。味見程度にな。このくらいの酔いはまったく問題ない。かえって気分よく芸術に浸れるというものだ」

軽い食事とお酒は、たっぷりと芸術を楽しんだ後に振舞われる。

酔っていては名画の講釈も頭に入らないだろうし、有名な音楽家の演奏も台無しだ。

けれども、そのようなルールは、ウォベック公爵には通じないらしい。

王太子は微笑みを絶やさない。

王家に次いで地位の高い公爵家に気を使っているのか、それともこういう気質の人だと慣れているからなのか。

軽く頷いただけで、話題を隣の男性に変えた。

「この方が返事に書いてあった――」

それを遮るように、画廊商の男が勢いよく話し出す。