レミリアはメッセージカードに頬を染め、重そうな花束を受け取ってはにかむように微笑んだ。

「ありがとうございます。こんなに嬉しい贈り物は初めてですと王太子殿下にお伝えください。いい香り……。真っ青な花弁の一枚一枚がとても綺麗です」

かつてレミリアがこれほど上手にお礼を言えたことがあっただろうか。

(ああ、レミリア様が素直に喜んでいらっしゃる……。頬まで染めて、やっぱり攻略対象は王太子に絞るべき?)

今のところ、レミリアが恋心を抱きそうな相手は王太子だろう。

けれども一番の難関で、王太子妃目指して頑張りましょうとは言いにくい。

(失敗した場合の処刑エンドが、恐ろしいわ……)

王太子の近侍が帰った後、青バラの花束は玄関ホールとリビング、レミリアの部屋に分けて飾られた。

レミリアは今、自分の部屋で刺繍をしている。

これはレミリアの趣味ではなく家庭教師からの宿題なのだが、じっと部屋にこもってちまちまと縫う作業は、引きこもりたい彼女にとって苦痛ではないようだ。

半分ほど縫った刺繍は、小さな丸テーブルに合うサイズのテーブルクロスに仕立てる予定だという。