『不思議なんだよ。存分に着飾れと言ってやりたいのに、贅沢をさせたくないんだ。毎月少額ずつ与えよう。なぁに、前回と同じドレスを着て攻略対象キャラと会っても、小物を変えるだけで別物とみなして褒めてくれる。そういうゲーム設定なんだ。ん……? ゲーム設定? 私は疲れているのか。自分の言っていることがよくわからんな。とにかく金は出せない。工夫して乗り切ってくれ』

同じ服でもイヤリングひとつ違うだけで、『今日の服、俺好み』と褒められる乙女ゲームは、何本かプレイしたことがある。

ブルロズもそういう感じなのだろう。

けれどもここはエマやレミリアにとって現実世界なので、同じドレスでパーティーに参加すれば笑い者。貴族女性として、やってはならないことである。

それでエマは悩んだ結果、伯爵夫人のお下がりのドレスや帽子を今風にアレンジしたり、レミリアが幼少期に使っていた装飾品を大人っぽく見えるようにリメイクしたりと、この三日間、夜なべして針仕事に励んだ。

そのエマの努力と針で刺した無数の指の傷を知っているため、レミリアは嫌と言わずに大人しくファッションショーに付き合ってくれている。