五年経っても屋敷内をバラで飾り、妻への愛でいっぱいにしているというのに、遺言に従って新たな妻を迎えようとする彼が哀れに思えた。

バルニエ伯爵がエマの涙に気づく。

「申し訳ない。あなたを泣かせるつもりはなかったのに……」

「いいえ、謝るのは私の方です。レミリア様を気に入っていただこうと、頑張ってしまいました。バルニエ伯爵様のお気持ちも考えずに、いいご縁があったと喜んでしまって……」

「お誘いしたのは私です。私がそう思わせたのですから、あなたが謝ってはいけません」

バルニエ伯爵は胸ポケットのチーフを取り出し、それでエマの涙を拭いてくれた。

視界がクリアになると、やや垂れ目で甘いマスクがすぐ目の前にあることに気づいた。

近すぎる距離に心臓を跳ねらせたら、ハッとして、慌てて片足を引く。

その時、バルニエ伯爵とエマの間に三つの選択肢が現れた。

①【無理に奥様の遺言に従う必要はないと思います】
②【どうか奥様の願いを叶えて差し上げてください】
③【奥様を愛するお気持ち、よくわかりました。わたくしが入る余地はありません】

(な、なんで私が選択しないといけないの?)