あなたが私を選んだ理由に、断固異議あり!

「ただいま。長い間留守をしてすまなかったね。」

樹生さんは、優しい声でそう言った。



「お、おかえりなさい。」

こんな時、何て言うべきなんだろう?
言いたいことはたくさんあるはずなのに、それだけしか出てこなかった。
混乱しながら、川北さんの作ってくれた夕飯を二人で食べて…
その間もほとんど会話がなかった。
まるでお通夜だ。
川北さんが帰ってからはますます気まずい雰囲気になって…
耐えかねた私はついに、口を開いた。



「ドイツはいかがでしたか?」

樹生さんは顔を上げ、私を一瞬みつめてから…



「……なんてことはないよ。」

素っ気なくそう言った。



どうしよう?
誰と行ったのか訊いてみようか?
私は半ばやけくそになっていた。
悩むのに疲れてたから。
もう早く決着を付けたかったんだ。



「あ、あの…ドイツへはどなたと?」

ついに訊いてしまった。
私はドキドキしながら、返事を待った。
樹生さんは、私を見ないまま、だけど、きっぱりとした声で言った。



「君には関係ないから、気にすることはない。」

なんて冷たいことを…
その言葉を聞いた時、なんだか急に感情が高ぶって…
込み上げてくる涙を見せたくなくて、私はそのまま、外に飛び出した。