それでも止まることのない蓮くんは、


「可愛いお前が他の男と婚約させられるってのに、黙って見てると思う?」

「……そんなこと言われても、これはずっと前からパパとママが決めたことで。私は口答え出来ないし……」

「今はね?」


頬に流れる私の髪を耳にかけながら、


「でも、絶対俺じゃなきゃダメって言わせるから」


自信をたっぷり含んで、蓮くんが言い切った。


「な、なんの宣言……?」

「どんなにすごい花婿候補が現れても、歌鈴を譲る気ないってこと」


蓮くんは若さんに聞こえないくらいの声で、私の耳元でそっと囁いたのだった。