「んーん。なんでもないよカイル。可愛い子見つけちゃっただけ。すぐ行くから車で待っててくれる?」

「かしこまりました理人様」


“カイル”と呼ばれた男性は再び車に乗り込んだ。

理人先輩は、花咲財閥の御曹司。

この羽丘高校でも、外の世界でも、知らない人がいない程の有名人なのだ。


「急いでるんでしょー? だったら家の車で送ってくよ?」


ふわふわした柔らかい笑顔を浮かべてみせる。


「えと、あの……」


突然のことに驚いていると、


「申し訳ありませんが、近いです!!」

「ちょ、若さん!」


白目が見えそうな程の鋭い瞳で割って入ってきた若さん。