パパの顔に、不安の色は少しもなかった。


「……海外に連れて行くのは、冬休みだけにしようか、ママ」

「……パパ!?じゃ、じゃあ……っ、」


私は飛びつく勢いで身を乗り出した。


「……っ、パパは別に、まだ認めたわけじゃないんだからね!?」


唇を尖らせていじけたように肩を縮めている。


「パパ、往生際が悪いわよ。歌鈴を溺愛してるのはわかるけど、それ以上はやめなさい。老害なんて言われたら悲しいでしょ? ね?」


ママがパパを諭しながら、


「そうだ歌鈴。花嫁修業の話もじっくり聞きたいし、あのノートを持ってきてちょうだい」


パチッとウィンクして私へ合図する。

ママ、ありがとう……。

私と蓮くんは顔を見合わせて笑い合うと、玄関へと向かって歩き出した。