嘘でしょ、とおろおろする私を見透かしたように見ている。


「どうすんの? それじゃ結婚して俺が仕事行ったあととか、悪質なセールス詐欺に騙されるんじゃない?」

「そ……そんなのに騙されないよっ。家のことは私に任せてって……言えるようになるもん!」


元レスリング部部長のママみたいに身も心も強くはないけど、そうなりたいんだ。

ちょっとだけ悔しくて、蓮くんに負けじと胸を張ってみせる。


「……可愛すぎかよ」


あー、しんど……って、おでこに手を当ててるし……。


「私は本気だよ……っ?」

「はいはい。てか、会社行きたくなくなるよね」

「……?」

「どうせわかってないからいいよ」

「っ、」


満足そうに微笑むと、チュッと私のおでこにキスをした。


まだ想像もつかないずっと未来の話だけれど、幸せな気持ちに包まれた夜だった。