「先輩、これ落としましたよね?」

「っ、」

「部室の前で見つけました」


横から蓮くんが手渡したのは、見当たらなかったはずの糸切りばさみだった。


「糸切りばさみ!!」


あれ……?

でも部室って。

私が行った時、糸切りばさみなんて落ちてなかったんだけどな……。


「あ、ありがと……。歌鈴ちゃんを探していた時に、落としたのかもしれないわ……」


ぎこちなく答える秋元先輩の瞳を、蓮くんはじっと見つめていたように思う。


「……よかったぁ、見つかって!きっとあちこち走り回ってたから、落としてしまったんですね」