そんなことを考えながら静かな廊下を歩いていると、
「幼い頃の歌鈴ちゃんには会ったことがあるが、きっとあちらは覚えてはいないだろう」
私……の話……をしてる!?
深みのある男性の声にピタリと足を止めた。
渡り廊下の向こう側には、スーツを着た男性と理人先輩がいた。
「今はより綺麗に、さらに可愛くなってますよ。お父さんも驚くと思います」
あの理人先輩が、敬語で話をしてる……。
「ほお。そうか。それは年々圭吾の心配性が悪化するのも無理はなかろう」
はっはっはっ、と漫画の中の人みたいに豪快に笑った。
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