秋元先輩は、衣装をとても大切そうに眺めている。
分厚い沈黙が流れて、どれくらいが経ったかな。
私は他の男子生徒の衣装に刺繍を入れていた。
気持ちはどんより重くて全くはかどらない。
「歌鈴ちゃんって、婚約するのよね?」
その沈黙を破るように先に口を開いたのは、秋元先輩の方だった。
「……えと、まだ決まってはないんです。ただ、両親の中でその話は進んでいて……」
「ふふっ。噂通りだね。ちなみにその相手は、花咲くんでしょう? 女子が悲惨な顔で騒いですごかったから」
「……うっ。そんなことまで耳に入ってたなんて」



