それは本当に突然だった。 バサッと衣装が宙を舞うように、私の目の前から消えた。 衣装の行方を追いかけるように目を上げると、 「これはわたしの」 「……え?」 感情の読み取れない表情で、秋元先輩が言った。 「ふふっ」と笑ってみせたけど、メガネの奥の瞳は少しも笑っていない。 手には衣装を握りしめたまま。 わたしのって……? 「──この衣装を直す仕事だけは、誰にもあげないって決めてたから。先に言えばよかった。ごめんね?」 無機質な冷たい声に、言葉に詰まった私は力なく首を振るだけ。