そんな私を気にしてくれた秋元先輩は、いつも暖房をつけて部室をあっためてくれていた。 気遣いの出来る優しい人。 だから、あの日感じた冷たい視線なんて、私の思い過ごしに違いない。 「難しいところはわたしが代わるから言ってね」 「ありがとうございます。あと少しなんですけど……」 深く開いたワインレッドのベストを縫い合わせる作業に取り掛かろうとした。 ヴァンパイアの衣装は襟ひとつさえ細かくて、難易度が高い。 蓮くんが着る衣装だから、より気合いを入れてるのはあるんだけど……。