「推しって……芸能人のファンだったっけ?」
「いや、芸能人には興味ないわよ。よし! 出来た!」
うちわにはでかでかと「若」の文字……。
色は白と黒。
まるで極道の世界を思わせるうちわに、私は唖然としてそれ以上突っ込まなかった。
* * *
放課後、貸し出ししてもらったお裁縫道具一式と、直しかけのヴァンパイアの衣装を抱えて部室へと急ぐ。
陽が落ちると一気に冷え込むから、指先がかじかんで上手く縫えないことが多い。
「こんにちは! 今日もよろしくお願いします」
「歌鈴ちゃん、寒かったでしょう? ここが一番暖かいから座って?」



