声のボリュームを上げると、ようやくその人が振り向いた。 「あ、ごめんね? わたし、夢中になると聞こえなくって」 漆のように綺麗な黒髪のポニーテールがくるんっと揺れた。 指定されたカーディガンの袖をまくり上げたままこっちに歩いてくる。 「一年の衣装係の子かな?」 「は、はい!」 黒縁のメガネを外す仕草さえ、妙に色っぽい……。 「はじめまして。わたしは二年の秋元未央奈です」 その名前に、私は二乃ちゃんが言っていた先輩だってすぐに気づいた。