「可愛すぎ」

「……蓮く……っ、」


ほんの少し唇を離すと、蓮くんは吐息混じりに声を落とした。

だけどその時、ガツンッ!と背後から何かを落とす音が聞こえた。


「きっ、貴様ァァァァーー! お嬢様に何をしている!!」


スマホを落とした若さんの怒号にビクリと身体が飛び跳ねた。


「もう逃げらんねぇな、俺」

「蓮くんのバカ……っ」


自嘲気味な笑みを浮かべた蓮くんから離れると、私はその場を駆け出した。


「チームB!! 今すぐ森の奥にでも墓穴(はかあな)を作っておけーーー!!」


そんな若さんの怒りに満ちた声が響いていたけど、私は振り返ることなく学校へと走った。