たとえ、そのせいでパパが悲しむことになったとしても、気持ちは揺らぐことはないと思う。
こんな状況でもふと浮かんでくるのは、やっぱり蓮くんで……。
「今すぐ婚約してくれなんて言わないよ。ただ望んでることはひとつだけ」
「……望み?」
ゴクリと喉を鳴らして、理人先輩を見つめ返す。
「いつになったら歌鈴ちゃんの中から青葉蓮を追い出せんの?」
普段よりもずっと低い声。
いつものようにヘラヘラした理人先輩はそこにはいなかった。
「ずっと会いたかったよ、俺は」
「っ、」
芸術みたいに綺麗な顔をかくんと傾ける。
シルバーのピアスが煌めいた。
危機感を覚えて、迫る理人先輩の胸をトンっと押し返そうとしたけれど……



