「あのふたりに宣戦布告みたいなことしてまで連れ去ったくらいだよ?」
私の顔をクイッと軽く自分の方へ向かせた。
「決死の覚悟ってやつだね」
こんなに本気になったのは何年ぶりかな、なんて小声で言いながら。
「今頃、歌鈴ちゃんの幼なじみ──青葉蓮も相当焦ってんだろーな。目に浮かぶよ」
かと思えば、今度は声をもらして笑う。
どこまでも掴めない人。
「それに、ここならあのふたりもさすがに狙えないでしょー? 」
「けど、私と理人先輩の婚約は、まだ先のことで……」
私の中で決まってもいない。
だから、どんなに熱心になられても、首を縦に振ることは出来ないんだ。



