「でも、理人先輩は嫌じゃないんですか……? 自分の将来のことを、親に決められること……」 「全然。むしろ歓迎するよ。だって、相手が歌鈴ちゃんだから」 「私だから……?」 驚きを隠せずに私は目を丸くした。 「婚約の話をされた時はついにきたかって思った。でも相手が歌鈴ちゃんだって知った時、俺は嬉しかったよ」 ふと顔を上げれば、理人先輩の瞳が私を見据えていた。 「だから、今度は絶対振り向かせたいって思った」 すっと伸びてきた理人先輩の指は、躊躇いがちに私の頬に添えられる。