突然若さんが声を張り上げた。

目で人を倒しそうな勢いでハッ!!と振り向けば、


「あ、やっぱり歌鈴ちゃんじゃん」


その声とともにすーっと現れたのは、見覚えのある黒い車。


「えと……理人先輩……?」

「お嬢様がお買い物? 社会勉強?」


私達の横で停車した車の窓から、理人先輩が顔を出した。

けれど、私は一瞬目が点になる。

休日だからか、理人先輩はスーツを着ていて、チェックのネクタイを締めていた。

その姿はさすが花咲財閥の御曹司って感じで。


「あー、これ? ネクタイとか好きじゃないんだけど、会食だったからねー」

「そうなんですね。いつもと違ったからビックリしました……」