ぜんぶ欲しくてたまらない。




外の雨の音よりも、怖い雷の音よりも、自分の胸のドキドキの方が大きい。


シングルベッドに2人で寝るのは狭すぎて、ピッタリくっつくわたしとコウくんの体。


コウくんがギュッとわたしを包むから、わたしはここから動けない。



「モコモコ気持ちいいね」



この前も言っていた。


確か羊みたいだって。



「抱き枕より芽依の方がよっぽどいい」



コウくんは抱き枕がないと寝られないという可愛い一面がある。


今もベッドの隅に抱き枕が置かれていることが何よりの証拠。



「コウくん、ちょっと苦しいよ」


「離れるのはダメだよ。芽依は俺の可愛い抱き枕なんだから」


「……っ」



おでこに柔らかい感触。


それがキスだとわかったのは、数秒経ってから。


胸の音がコウくんに聞こえてしまったらどうしよう。



ずるいよ、コウくん。

わたしだけこんなにドキドキさせられて。