「ご、ごめんっ……離れるから離して!」
「やだ」
わたしを支えるように受け止めてくれたコウくんが手を離してくれない。
離すどころかしっかり腕に包まれてしまっている。
「ねぇ、モコモコパジャマって気持ちいいよね」
確かに肌触り最高だけど、今はそれどころじゃ……
「"メイちゃん"って羊の鳴き声みたいで芽依にピッタリじゃない?」
心臓が口から飛び出てきてしまいそうなくらい近いコウくんとの距離にドキドキしているというのに、呑気に意味不明なことを言うコウくん。
「コウくんっ!もう離してってば」
「ねぇ、可愛い声で鳴いてみてよ。メェーって可愛く言ってくれたら離してあげる」
だ、だから意味わからないんだってば!
コウくんは何をしたいの?
わたしで遊んでるよね?
だって、すごーく意地悪な顔してるもん。
「困ってる顔も可愛いね」
「なっ、な……」
確かに可愛いと思って欲しいとは思ったけど……こんな不意打ち。
コウくんはわたしのことをどうしたいの?
「んー、可哀想だからもう許してあげる」
やっとコウくんは解放してくれた。
本当にコウくんの意地悪は心臓に悪すぎるよ。
コウくんとの半同棲生活は残り6日。
こんな調子でわたしは乗り切れるだろうか。