───ピンポーン
行くといっても目的地はすぐ隣。
呼び鈴に答えたのはコウくんのお母さん。
まだ家を出ていなかったんだ。
「芽依ちゃん、急にごめんね?」
ガチャっと開いたドアの先でコウくんのお母さんが出迎えてくれた。
「いえいえ、コウくんのおばあちゃんの体調の方が心配なので……家のことは気にせず行ってきてください」
「もう芽依ちゃんは優しすぎて涙が出ちゃいそうよ。航大も芽依ちゃんのように育ってくれたらよかったんだけど……」
コウくんは意地悪だけど、とても優しいですよ。
その言葉は、後ろにコウくんの姿を見つけてしまい、恥ずかしくてそっと飲み込んだ。
「航大ー!行ってくるから、くれぐれも芽依ちゃんに迷惑かけないようにね!」
コウくんからの返事はなく、コウくんのお母さんは深いため息をついていた。
「ちょっと面倒くさい息子だけど、いざという時は頼りになると思うから、申し訳ないけどよろしくね。もしなんかあったらお母さん経由でいいからすぐに連絡頂戴!」
布団も準備してあるし、家にあるものは自由に使ってと優しい言葉ももらって、お礼を伝えて見送った。



