ぜんぶ欲しくてたまらない。




***



「じゃあ芽依、行ってくるわね」



急に決まっていつ準備したのかわからない大きなキャリーバッグを持って玄関に立つお母さんとお父さん。



「うん、楽しんできてね」


「ちゃんと芽依にもたくさんお土産買ってきてあげるからな」


「うん、期待してる」



お母さんもお父さんも楽しそう。


わたしの記憶では、しばらく2人きりで旅行なんて行ってるところを見ていないから、久しぶりの旅行になるはず。


結婚してからもう20年くらいになるのに未だ仲良しな2人。


せっかく行くなら思う存分楽しんできて欲しい。


わたしは玄関先で浮かれる2人を見送った。



「さぁて、わたしも行きますか」



戸締りをしっかり確認してから、まとめておいた荷物を持って家を出た。