お母さんはわかっていたのかどうなのか。


牛乳もキャベツも広告の品でいつもより安く買えた。


こうしてお使いをしていると、この野菜はいつもより高いとか、お肉は今日安いとか、そんな金銭感覚がついてきた。


将来役に立ちそうだし、そこだけはお母さんにちょっぴり感謝している。


無事に買い物が済み、マンションへと戻る。


わたしが帰る頃にはお隣さんの引っ越し作業は終わっていたようで静かになっていた。



「ただいまー」


「芽依おかえり。わざわざありがとね」


「牛乳とキャベツでいいんだもんね」


「うん、バッチリよ」



褒め方がはじめてのおつかいを成功させた子どもに向けているみたいでちょっと嫌になるけれど。



「そういえば、隣に誰か引っ越してきたみたいだよ」


「んふふ」


「え、何?」



お母さんは何やら嬉しそうで、ルンルンとしながらわたしが買ってきた牛乳とキャベツを冷蔵庫へしまっていく。



「お楽しみよっ」



───なんだろう。


お母さんの不自然な態度に不信感を抱きながらも、夕飯ができるまで自分の部屋へ戻ることにした。