「さすがにまだ夏だしモコモコパジャマは着れないよ」
「じゃあー冬まで待ってるから、絶対着てね」
そうおねだりするコウくんは、まるでプレゼントを待つ子どものよう。
普段はぶっきらぼうで無表情なことが多いコウくん。
こんなコウくんの姿を知っているのは多分わたしだけ。
わたしだけのコウくん。
全部独り占めしたくなる。
「ねぇー芽依、まだ終わんないの?」
「無理だよ……!」
行き詰まっていた問題の解き方を教えてくれたかと思えば、後ろから抱きつくように覗き込んでくる。
そんなことされたら、せっかく教えてくれた解き方だって頭の中が真っ白になって飛んでいく。
「芽依ー、チューしたい」
「はい!?……んんっ」
いいともダメとも言う前に、コウくんはわたしの唇を奪っていく。
まだキスの仕方がわからないわたしはすぐに息切れをしてしまうというのに、コウくんは満足そうに笑ってわたしの髪を撫でた。
コウくんは手伝ってくれているのか、わたしの邪魔をしているのかわからない。
それくらいわたしにちょっかいを出してくる。
コウくんってこんなに甘かったっけ……?
付き合ってからというもの、コウくんはまるで縛り付けられていた縄が解けて開放されたかのように甘えてくる。
コウくんは毎日ウチに来てわたしの宿題を見てくれたけど、毎回そんな調子なせいで全然進まず……
結局宿題を全て終えたのはギリギリ始業式前日の夜だった。



