「あはっ、冗談だよぉー怒らないで、航大くん」
梨里愛の言うことは冗談に聞こえない。
「あーでも、航大くんが梨里愛のこと無視してあの子ばーっかり構ってたら……間違って口が滑っちゃうかも?」
「は?」
「なーんてねっ」
口元は笑っているのに、目は全く笑っていない。
本当、性格悪。
「わかった。お前のお望み通り芽依とは必要以上に近づかない。梨里愛の言うこともある程度は聞く。だから芽依に俺の過去を言わないで欲しい」
「ある程度、かぁ。仕方ないなぁー航大くんのことだから許してあげる」
「それと、芽依になんかしたら許さないから」
そう言い残して、梨里愛の元から立ち去った。
芽依のことになると余裕がなくなる俺。
……いや、結局は自分を守るためなのかもしれない。
芽依に嫌われたくないから。
情けねぇな、俺。
それからは梨里愛の言う通り、芽依とは距離を取るようになった。
次第に会話も減っていった。
教室にいても芽依の後ろ姿をただ見つめるだけの日々。
そんな中、久しぶりに芽依に会って話したのが、今日のお祭りだった。



